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若い人と高齢者の側弯症の違い|70代の側弯症に対する治療と歩行改善

2026.09.05 | Category: 側弯症について,治療について

側弯症の治療を考えるとき、年齢はとても重要です。

10代の成長期にみられる側弯症と、70代になって長年の側弯がある身体では、同じ「側弯症」であっても、治療で目指すところは少し違ってきます。

今回ご紹介するのは、胸椎が右凸、腰椎が左凸となる強い側弯症がある70代の患者様です。

当初、一番困っていたのは腰痛でした。

椅子から立ち上がるときや動き始めに鋭い腰痛がありましたが、身体の状態に合わせた施術や運動を続けることで、強い腰痛は徐々に軽減していきました。

ところが、腰痛が落ち着いてくると、今度は別の問題が見えてきました。

右膝の痛みと、左足の小指球にできた胼胝の痛みです。

ここから、「側弯症の身体をどこまで変えるべきなのか」という問題を考えることになりました。

高齢者の側弯症では「真っすぐにする」ことだけが目標ではない

この患者様は、歩行すると身体が大きく左側へ移動します。

背景には、強い側弯によって腰椎が左へ偏位していることがあります。

さらに歩行を確認すると、右股関節で身体を十分に支えにくく、骨盤・股関節が横方向へ移動し、そのバランスを取るように上半身が左へ移動しているように見えました。

ここだけを見ると、

「右のお尻を鍛えて、右脚でしっかり支えられるようにすればいいのでは?」

と思われるかもしれません。

確かに、臀部や股関節周囲の筋力は歩行にとって重要です。

しかし、この方の場合は、それだけではありません。

70年以上、その骨格で身体を支えてきています。

現在の歩き方も、単純な筋力低下だけで生まれたものではなく、側弯した脊柱や骨盤、股関節の位置関係の中で、身体が長い時間をかけてつくってきたものと考えています。

だからこそ、

「変えられること」と「変えた方がいいこと」は、少し違います。

10代と70代では側弯症の治療目標が違う

10代の成長期にみられる側弯症では、今後の骨格の成長を考えながら、側弯の進行リスクを評価し、必要に応じて経過観察や装具療法、専門的な治療を検討していきます。

つまり、**「これから成長していく身体をどう守るのか」**という視点が非常に重要になります。

一方、70代では事情が変わります。

長い年月をかけて現在の骨格や動き方が形成されているため、「できるだけ真っすぐにする」ことだけが、その方にとって最善とは限りません。

身体のバランスを大きく変えることで、それまで負担の少なかった腰、股関節、膝などに新しい負担が生じる可能性も考える必要があります。

特に、変形性膝関節症や変形性股関節症などを併発している場合には、側弯症だけを見るのではなく、身体全体の状態から治療方法を考えることが大切です。

側弯症による歩行の左右差と右膝の痛み

今回の患者様では、身体が左へ移動しやすく、左脚へ荷重する傾向があります。

一方で右膝には痛みがあります。

ここで単純に、

「左右均等に体重を乗せましょう」

と歩行指導してしまうと、右膝への負担が増える可能性もあります。

一見すると左右差のある歩き方でも、身体が痛い関節を守るために選択している動きである可能性があります。

そのため当院では、歩行改善=左右均等に歩くこととは考えていません。

大切なのは、

「なぜ、この方はこの歩き方になっているのか」

を確認することです。

左足の痛みを改善して、身体を支えやすくする

ただし、左脚へ荷重することにも問題がありました。

左足の小指が捻じれるように横を向き、いわゆる「寝指」の状態となり、小指球には胼胝ができています。

そこに痛みがあるため、左脚で身体を支えようとしても、足そのものが負担に耐えにくくなっています。

そこで今回は、身体そのものを大きく変える前に、インソールを使って左足を支えやすい環境にすることを優先しました。

インソールで足裏の荷重を調整

今回は、左足に対して大きさの異なる2種類のインソールパーツを使用しました。

数か月使用していただいたところ、大きいパーツでは左小指球の痛みが軽減。

小さいパーツでも普段より楽になるものの、痛みが残りました。

そのため、大きいパーツを第一選択としています。

同時に、もう一つ試している方法があります。

小さいパーツに、左踵外側をわずかに持ち上げる外側ヒールウェッジを組み合わせる方法です。

足元から荷重位置を調整し、左小指球へ集中している負担を変えながら、身体全体の歩き方がどう変化するのかを確認しています。

右膝を守るために左脚へ荷重する。

しかし、左脚に負担をかけすぎれば、今度は左足や左膝に問題が生じる可能性があります。

だからこそ、一か所だけではなく、腰・股関節・膝・足、そして歩行まで含めて評価することが重要になります。

高齢者の側弯症ではインソールやシューズに頼ることも選択肢

今回の治療では、

① 左足をインソールで支えやすくする
② インソールの調整によって荷重位置を変えてみる
③ 身体の反応を確認しながら右臀部・右股関節のトレーニングを行う

という順番で考えています。

もちろん、筋力トレーニングが必要ないという意味ではありません。

しかし、70代の強い側弯症に対して、身体そのものにすべてを任せる必要もないと私は考えています。

インソールに助けてもらう。

シューズに助けてもらう。

必要なところはトレーニングする。

身体に頑張ってもらうところと、道具に助けてもらうところを分ける。

これも高齢者の歩行改善では大切な考え方です。

側弯症の身体は、どこまで変えるべきなのか

「痛みは取れますか?」

「どうすれば治りますか?」

患者様が知りたいのは、やはり明確な答えだと思います。

成長期の側弯症では、将来の進行リスクを考えながら治療方針を立てていきます。

一方、長年その身体で生活してきた高齢者では、身体をどこまで変えることが、その人にとって本当に良いのかまで考える必要があります。

無理に理想的な姿勢へ近づけるのではなく、今ある身体をできるだけ生かしながら、痛みや負担を減らし、歩きやすい状態をつくっていく。

施術、運動療法、歩行改善・歩行指導、シューズ、インソール。

一つの方法だけで答えを決めるのではなく、いくつかの選択肢を試しながら身体の反応を確認していく。

若い身体には若い身体の治療があり、年齢を重ねた身体には、その身体に合った治療があります。

今回の患者様もまだ治療途中です。

身体の反応を確認しながら、その方にとって無理のない「ちょうどいいところ」を一緒に探していきたいと思っています。

側弯症の腰痛が良くり、次に見えてくる変形性膝関節症の問題

2026.08.31 | Category: 側弯症について,変形性膝関節症,治療について,足について

今回ご紹介するのは、強い側弯症がある70代の女性です。

初めて来院されたとき、最も困っていた症状は腰痛でした。

椅子から立ち上がるときや、身体を動かし始めるときに、腰へ鋭い痛みが走ります。

そのため、まずは日常生活を妨げている腰痛を改善することから治療を始めました。

まず取り組んだのは、側弯症に伴う腰の動き

この方には、腰椎が大きく左側へ偏位する「左凸」の強い側弯がみられます。

身体の状態を確認しながら、側弯の特徴に合わせた運動やトレーニングを行い、腰やその周囲の可動性を少しずつ改善していきました。

治療を続ける中で、立ち上がるときや動き始めに感じていた鋭い腰痛は徐々に軽減。

日常生活でも、以前のような強い痛みを感じることが少なくなってきました。

ところが、腰痛が落ち着いてくると、今度は別の症状が気になるようになります。

「右膝が痛い」

「左足の小指の胼胝が痛い」

という訴えです。

腰痛が良くなったからこそ、次の問題が見えてくる

これは臨床では珍しいことではありません。

強い腰痛があるときには、膝の違和感や足裏の小さな痛みまで意識が向きにくいことがあります。

一番困っていた腰痛が改善したからこそ、それまで目立たなかった身体の問題が見えてきたとも考えられます。

ここからは、右膝と左足の小指球に対する治療を考えていくことになりました。

しかし、この方の場合、

「膝が痛いから膝だけを治療する」

「胼胝が痛いから足だけを調整する」

という考え方だけでは十分ではありません。

側弯症では「痛い場所」だけでなく歩き方も確認します

この方の腰椎は大きく左側へ偏位しています。

さらに歩行を確認すると、身体を左側へ傾けながら、左脚へ荷重する傾向がみられました。

つまり、腰・骨盤・股関節・膝・足は、それぞれ別々に働いているわけではありません。

身体全体でバランスを取りながら歩いています。

現在みられている右膝の痛みや左小指球の胼胝についても、痛みのある場所だけを見るのではなく、左右の荷重バランスや歩き方まで含めて考える必要があります。

これは、変形性膝関節症や変形性股関節症を考えるうえでも大切な視点です。

成人の側弯症や脊柱変形では、骨盤の傾きや股関節の状態との関連も報告されています。

今回の患者様には、現在のところ明らかな変形性股関節症はありません。

しかし、身体が大きく左へ偏位している状態から歩き方や荷重位置を変えるのであれば、右膝だけでなく右股関節への負担がどのように変化するのかも考えておく必要があります。

「左に偏っているから、右へ乗せればいい」

そんなに単純ではないのです。

歩行改善は「左右均等に歩くこと」だけではありません

歩行改善や歩行指導というと、

「姿勢を真っすぐにする」

「左右均等に体重をかける」

といったことをイメージされるかもしれません。

しかし、長年の側弯症や変形性膝関節症、変形性股関節症などがある場合、身体はその状態に合わせて歩き方を変えていることがあります。

一見すると悪い歩き方でも、実は痛い関節を守るために身体が身につけた動きかもしれません。

そこを急に変えてしまえば、別の場所に負担が移ることも考えられます。

だからこそ当院の歩行指導では、単純に歩き方の形だけを整えるのではなく、

「なぜ、この人はこの歩き方になっているのか」

というところから考えます。

今の痛みと、この先の身体の両方を考える

治療でまず大切なのは、患者様が現在困っている痛みを改善することです。

しかし、その先には、

「この身体で、これからどう歩いていくのか」

という問題があります。

今ある痛みを楽にすることと、身体全体のバランスを整えていくこと。

この二つが、必ずしも同じ方法で解決できるとは限りません。

そのため当院では、施術だけでなく、運動、歩行改善・歩行指導、シューズ選び、インソールなども含めて身体を確認し、その方に必要な方法を組み合わせながら治療を進めています。

側弯症そのものだけを見るのでもなく、痛い場所だけを見るのでもない。

「なぜ、そこに負担がかかっているのか」まで身体全体から考える。

腰痛が改善した今回の患者様も、ここで治療が終わったわけではありません。

右膝の痛みや左足の胼胝と向き合いながら、股関節や膝への負担も確認し、この先もできるだけ無理なく歩き続けられる身体を目指していきます。

側弯症による腰痛をはじめ、変形性膝関節症・変形性股関節症、足の痛み、歩き方などでお悩みの方は、一度ご相談ください。

現在の痛みだけでなく、歩行まで含めてその背景を確認しながら、一緒に治療方法を考えていきます。

子供の側弯症

2025.10.06 | Category: 側弯症について

まず前提として、「歪みを整えること」はとても大切なことだと当院は考えています。
身体が歪んだ状態では、一部の関節や筋肉に負担が集中し、痛みや不調を引き起こしやすくなります。
そのため、歪みを整えることは“自然なバランスを取り戻す”ために必要なことです。

ただし、左右対称を目指す必要はありません。
人の身体には生まれながらの左右差があり、それが自然な状態です。
利き腕や利き足があるように、筋肉の使い方や骨の発達の仕方も違います。
内臓の位置も、心臓は左寄り、肝臓は右寄りにあります。
つまり、「ゆがみがあること」そのものが人間の自然な個性なのです。

「自然な左右差」と「側弯症」は別の問題です

ここで側弯症について考えてみましょう。
側弯症は、こうした日常的な左右差とは別軸の問題です。
骨格そのものにねじれや湾曲が生じている「器質的な歪み(構造的な変化)」が見られる状態を指します。
いわば、体の設計図の段階で傾きがあるようなイメージです。

ただし、「器質的なもの」と「機能的なもの」の境界は非常にあいまいです。
実際には、姿勢や歩行の改善、筋トレや体幹トレーニングによって歪みが軽減するケースも多くあります。
特に成長期の子どもは骨が柔らかく、適切なアプローチによって改善の余地が大きいのが特徴です。

側弯症とは、機能的なエラー(使い方の偏り)と器質的なエラー(構造的な歪み)が重なって起こる状態です。
そのため、「歪んだ骨格をどう使い、どう支えるか」によって状態が大きく変わります。
歩行や姿勢の改善、骨格調整、体幹の安定化トレーニングによって、
背骨への負担を減らし、変形の進行を防ぐことは十分に可能です。

痛みの有無は「角度」だけで決まりません

側弯症の程度を表す指標として、「Cobb角(コブ角)」というものがあります。
角度が大きくなると、医学的には手術が検討されることもありますが、
実際にはCobb角が40度を超えていても痛みを感じない方も少なくありません。

たとえば、当院で拝見した患者様のレントゲンではCobb角が40度以上ありましたが、
痛みや違和感はまったくなく、日常生活にも支障はありませんでした。
一方で、角度が小さくても筋肉や関節に負担が集中して痛みが出る方もいます。

つまり大切なのは、「角度」ではなく、
その歪みが身体のどこにどのような影響を与えているのかという点です。

左右差を受け入れながら、よりよく動ける身体へ

私たちの身体は完全な左右対称ではありません。
しかし、その中で“どう動かすか”“どう支えるか”を工夫することで、
痛みや不調を予防し、快適な動きを取り戻すことができます。

当院では、姿勢や歩行の解析を通して、
今の状態とこれからの変化を一緒に確認しながら、
それぞれの方に合ったアプローチを提案しています。

側弯症という診断にとらわれすぎず、
「今の身体をどう使うか」「これからどう変化させていくか」を一緒に考えていきましょう。

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