側弯症の腰痛が良くり、次に見えてくる変形性膝関節症の問題
今回ご紹介するのは、強い側弯症がある70代の女性です。
初めて来院されたとき、最も困っていた症状は腰痛でした。
椅子から立ち上がるときや、身体を動かし始めるときに、腰へ鋭い痛みが走ります。
そのため、まずは日常生活を妨げている腰痛を改善することから治療を始めました。
まず取り組んだのは、側弯症に伴う腰の動き
この方には、腰椎が大きく左側へ偏位する「左凸」の強い側弯がみられます。
身体の状態を確認しながら、側弯の特徴に合わせた運動やトレーニングを行い、腰やその周囲の可動性を少しずつ改善していきました。
治療を続ける中で、立ち上がるときや動き始めに感じていた鋭い腰痛は徐々に軽減。
日常生活でも、以前のような強い痛みを感じることが少なくなってきました。
ところが、腰痛が落ち着いてくると、今度は別の症状が気になるようになります。
「右膝が痛い」
「左足の小指の胼胝が痛い」
という訴えです。
腰痛が良くなったからこそ、次の問題が見えてくる
これは臨床では珍しいことではありません。
強い腰痛があるときには、膝の違和感や足裏の小さな痛みまで意識が向きにくいことがあります。
一番困っていた腰痛が改善したからこそ、それまで目立たなかった身体の問題が見えてきたとも考えられます。
ここからは、右膝と左足の小指球に対する治療を考えていくことになりました。
しかし、この方の場合、
「膝が痛いから膝だけを治療する」
「胼胝が痛いから足だけを調整する」
という考え方だけでは十分ではありません。
側弯症では「痛い場所」だけでなく歩き方も確認します
この方の腰椎は大きく左側へ偏位しています。
さらに歩行を確認すると、身体を左側へ傾けながら、左脚へ荷重する傾向がみられました。
つまり、腰・骨盤・股関節・膝・足は、それぞれ別々に働いているわけではありません。
身体全体でバランスを取りながら歩いています。
現在みられている右膝の痛みや左小指球の胼胝についても、痛みのある場所だけを見るのではなく、左右の荷重バランスや歩き方まで含めて考える必要があります。
これは、変形性膝関節症や変形性股関節症を考えるうえでも大切な視点です。
成人の側弯症や脊柱変形では、骨盤の傾きや股関節の状態との関連も報告されています。
今回の患者様には、現在のところ明らかな変形性股関節症はありません。
しかし、身体が大きく左へ偏位している状態から歩き方や荷重位置を変えるのであれば、右膝だけでなく右股関節への負担がどのように変化するのかも考えておく必要があります。
「左に偏っているから、右へ乗せればいい」
そんなに単純ではないのです。
歩行改善は「左右均等に歩くこと」だけではありません
歩行改善や歩行指導というと、
「姿勢を真っすぐにする」
「左右均等に体重をかける」
といったことをイメージされるかもしれません。
しかし、長年の側弯症や変形性膝関節症、変形性股関節症などがある場合、身体はその状態に合わせて歩き方を変えていることがあります。
一見すると悪い歩き方でも、実は痛い関節を守るために身体が身につけた動きかもしれません。
そこを急に変えてしまえば、別の場所に負担が移ることも考えられます。
だからこそ当院の歩行指導では、単純に歩き方の形だけを整えるのではなく、
「なぜ、この人はこの歩き方になっているのか」
というところから考えます。
今の痛みと、この先の身体の両方を考える
治療でまず大切なのは、患者様が現在困っている痛みを改善することです。
しかし、その先には、
「この身体で、これからどう歩いていくのか」
という問題があります。
今ある痛みを楽にすることと、身体全体のバランスを整えていくこと。
この二つが、必ずしも同じ方法で解決できるとは限りません。
そのため当院では、施術だけでなく、運動、歩行改善・歩行指導、シューズ選び、インソールなども含めて身体を確認し、その方に必要な方法を組み合わせながら治療を進めています。
側弯症そのものだけを見るのでもなく、痛い場所だけを見るのでもない。
「なぜ、そこに負担がかかっているのか」まで身体全体から考える。
腰痛が改善した今回の患者様も、ここで治療が終わったわけではありません。
右膝の痛みや左足の胼胝と向き合いながら、股関節や膝への負担も確認し、この先もできるだけ無理なく歩き続けられる身体を目指していきます。
側弯症による腰痛をはじめ、変形性膝関節症・変形性股関節症、足の痛み、歩き方などでお悩みの方は、一度ご相談ください。
現在の痛みだけでなく、歩行まで含めてその背景を確認しながら、一緒に治療方法を考えていきます。




